ピンサロにアカリ 5話「黒服・タカユキ」
更衣室前の待機所で紅鮭弁当を食べていると、甘ったるいアニメ声が聴こえてきた。
「ねえねえねえ、洗浄綿、もうなくない?タカちゃあん、洗浄綿なーい!」
みるくに呼ばれた黒服のタカユキさんが、受付から戻ってくる。
「アホ、みるく。なかったら補充しといてくれよ。」
「だってえ、棚、高いから。みるく、届かないんだもん!」
ぷん!という効果音が聴こえてきそうなポーズを取りながら、みるくは言い放った。
洗浄綿のストックはシンク上の戸棚にあることを知っていながら、さらに言えばもう半年はこの店に在籍しているくせに、みるくは些細なことでタカユキさんを呼ぶ。
こんな時、みるくの心の底に溜まっている欲望が見え透くようで、思わず目を逸らしたくなってしまう。
みるくとタカユキ。
黒服にはふたつのタイプが存在すると思う。
仕事に厳しい姿勢を取ることで嬢に深入りしないタイプと、人当たりがよく頻繁に嬢の相手をするタイプ。
タカユキさんは後者の、嬢モテするタイプだった。
だがしかし、在籍嬢のうち面倒さがトップクラスであるみるくに気に入られてしまったのは、彼の計算ミスだったのではないだろうか。
周りの嬢や黒服たちは、みるくを「痛いヤツ」だと認識している。
そのため、こんなシーンを目にしてもほぼ全員が無関心の姿勢を取る。
そんな中、同い年であるというだけで、みるくは私に親近感を抱いているようだった。
ブサイクなのは、顔じゃなくて。
「アカリちゃあん、タカちゃんがつめたいよぉ。みるく、かなしい…」
下唇を突き出してわざとらしい泣き顔を作るみるくは、私から見てもなかなかのブサイクだ。
ブサイクというのはもちろん顔の造形のことではなく、その表情や所作の話なのだけど。
みるくの背後に立っておしぼりを補充しているタカユキさんは、(こいつ、真性のアホだわ)という笑いを含んだ眼差しを向けてくる。
二人とも、私にそんなこと言われても困る。
「えーみるくさんラッキーみるくさんラッキー、リストバック」
みるくに写真指名のコールが入った。
「あーん、みるく呼ばれたあ。アカリちゃん、タカちゃんと仲良くしたらダメだからね?いってきまあす。」
客観性を持たない女。
みるくは、どうしてあんなに痛いヤツなんだろう。
とは言えそれなりに社会性を持っている証拠として、いくばくかの本指名数はキープしている。
だけれど、あれ程に上っ面を作り込まれると、彼女には心の隙間も生活感も垣間見られず、得体の知れない怖さすら感じてしまう。
客観性を求めないまま、目の前の快楽だけを追い続けていたら、いつか私もあんな風になってしまうのだろうか。
彼女は「お客さん」という他人と刹那的に関わりながらも、もしかしたら自分しか存在しない世界に生きているのかも知れない。
他人が存在しない、自意識だけの世界。
客観性を排除した時から、人間は壊れ始めるのだろうか。
まるで共犯者のように。
そんなことを考えながらお弁当のゴミをまとめていると、間を持たせるようにタカユキさんが話しかけてきた。
「あいつ、ヤバいよな。」
何がヤバいのかは言葉にしなくても理解できたので、私は「そうですね、ヤバいです。」としか言えなかった。
私もまた間を持たせるために、冗談のつもりで「一回ぐらい、やってみたらどうですか?」と聞いてみた。
「いやあ、無理でしょ。やった後のことを考えると手が出せないわ。」
タカユキさんが、風紀違反常習の不良黒服であることは知っていた。
以前、たまたま他の嬢と連絡先交換をしている現場を目撃したことがある。
それに何度か彼の口から、風紀違反を仄めかす発言も聞いている。
「やっぱりモテる人は違いますねー。ちゃんと相手選ぶところとか。」
「まあ、年の功だよな。」
みるく不在の待機所で、私たちは薄い共犯者のように笑った。
文|カサイユウ(ライター・元風俗嬢)
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