私がまだ20代半ばだったころ、クレジットカードの現金化を利用した詐欺に遭ったことがあります。
今にして思えばなんであんなものに騙されたのか、本当に愚かだったと思います。
しかし、なんとか詐欺に遭いながらも詐欺師を撃破し、最終的には取り返すことに成功したという稀な体験をしました。
mixiで詐欺師と出会う
私はその頃、地元の田舎から転勤で東京にきていました。
初めて都会に住むことに浮かれていたことから出費はかさみ、気が付けば貯金を食い潰して上京してから数か月で食費すら足りなくなりました。
なんとかお金を作らなければという思いで、mixiの副業系コミュニティでその詐欺師・伊藤と会うことになりました。
伊藤は出会い系を経営していて、その資金集めに協力してくれる人を探しているということでした。
クレジットカード枠を使って新幹線チケットを50万円分買い、それを金券ショップで売りさばいて現金を作れと言うのです。
その中から私は30万をもらい、その残りをもらう伊藤は追加で毎月2万円を2年間私の口座に振り込んでくれるので私は損をしないという説明でした。
どう考えたっておかしな話なのですが、お金に困っていたことや伊藤が運転免許証を提示し返金するという誓約書で約束までしたことで信用してしまったのです。
当時の私はすぐにこの話がおかしいことに気づかず、もらった30万円で豪遊していました。
それから1か月後、きちんと伊藤からは約束の2万円が振り込まれたのでまだ私は騙されたままです。
2か月目の振込日には見事になんの振込もなく、ようやくここで我に返ります。
もちろん、伊藤のケータイは誰も出ずメールを送っても返信がありません。
騙された...
伊藤探しが始まる
最初に警察に相談しようと頭をよぎりましたが、すぐにその考えは無駄だと判断しました。
おそらく免許証は偽造であり、そもそもクレカの現金化という行為に対して警察が私の味方をしてくれる可能性は低い。
被害届くらいは受け付けてくれるかもしれませんが、警察が伊藤を探すことはないでしょう。
そこで私は、過去に某ケータイキャリアショップに務めていた時の同僚を頼り、伊藤の携帯番号から契約者名と住所を調べてもらいました。(本当はダメなことですけど)
そして伊藤の本名が田口ということを知り、生年月日などからもおそらく本人名義の契約ということがわかりました。
住所を調べると千葉の一軒家っぽい住所だったのでここが実家と判断し、田口の親を直撃するつもりで千葉へ向かいました。
意外な結末で勝利
千葉と言ってもネズミ園のあたりよりももっと奥の方で、都心からはけっこうな距離がありました。
ここまで来てなんの成果もなかったら報われないなと思いつつ、田口の実家はあっさりと見つかります。
小さいながらも綺麗な家で築10年以内に見えました。
金持ちでも貧乏でもなく、本当に普通の家です。
私の手には伊藤の名前が書かれた免許証のコピーがあり、免許証の顔写真自体は田口のものなのでそれを親に見せれば免許証を偽造している証明だけはできると考えていました。
そして、呼び鈴を鳴らすとなんと出てきたのは田口本人でした。
実家暮らしかよ!とツッコミを入れたいところはさておき
「伊藤、いや田口か。お金返してくれる?」
わざとらしく名前を間違えると私の顔を思い出したようで、田口は言葉につまりしどろもどろしています。
「お金だよ、お金!50万返して!」
私の不穏な声から異変に気づき、奥からお母さんが現れます。
最初は私のことをヤバいヤツだと思って怪訝そうな顔をしていたお母さんですが、私の主張を否定できずに口ごもるわが子を見て、お母さんも田口を信じられなくなってきます。
このあたりから自分に有利な状況がだんだん面白くなってきて
「田口君、オレからだまし取った50万すぐに返してよ!」
と、あえて近所に聞こえてもおかしくない大きさで叫んでみました。
もうお母さんは完全にアウトだと察したようで、詳しく話を聞きたいからということで家の中に招かれます。
もちろん玄関先で恥ずかしいことを叫ばれたくなかったのもあるでしょう。
中に入って話をすると田口の手口が色々とわかってきました。
田口は大学生で免許証は大学の友人から2万円で作ってもらったこと、グループではなく単独犯であること、これまでにも何人かだまし取っていることなど。
ちなみに私が住所と本名を調べ上げた方法ですが、裏社会の人間を使ったということにしておきました。
裏社会でもなんでもないんですけど信じ切っていましたね。
結果、50万円はすぐに田口のお父さんが銀行に行っておろしてきて私に返金。
最初に受け取った30万と振り込んだ2万はそのままでいいので迷惑料としてとっておいて欲しいということで話はまとまりました。
細かく計算すると元同僚にお礼として呑み代を奢ったり、千葉までの交通費がありますがなんだかんだで30万円ほどは得をすることに。
もっと脅し取ることもできたとは思いますがあまりやりすぎるとこちらも危険になってくると判断し、この件はこれで手打ちにしておきました。
投資・副業系の話は冷静に聞こう
騙されたお前が言うな、と言われてしまいそうですが騙された私だからこそ言います。
おいしい投資や副業などの話は冷静になって聞きましょう。
そんなにおいしい話は滅多にありません。
ほぼ100%に近い確率で裏があります。
特に今回のようなクレカ現金化のようなものは被害届も出しにくく泣き寝入りする人も多いでしょう。
私が田口を撃破できたのはたまたま相手の情報を調べられるチャンスがあったことや、相手が小銭稼ぎの大学生だったからです。
田口が飛ばしケータイを使っていたり、本格的に行っている詐欺グループだったりしたら手も足も出せずに泣き寝入りしていたでしょう。
お金に困っている時は冷静な判断ができなくなることもあるかもしれませんが、そんな時だからこそ冷静になろうという教訓になりました。