「ありがとうございます!ごちそうさまです!」
「よし!じゃあ、次の店行こう!」
みなさん、高級キャバクラには行ったことありますか?
大きなシャンデリアが店内には存在し、セクシーなドレスを身に纏った美人の集うお店です。
一般人な感覚からすると、ビールだけでもすごい金額になりそうなお店です。
私はありませんでした。
一緒に来ていた風俗店のオーナーさんは、仕事対応があるらしく、戻ってしまい、いわゆる“カタギ”は、自分一人になってしまった。
そんな状況下、怖い人たちの乗る高級車の後部座席に座っている。
話題もないから話すこともなく、無言の置物になるしかなかった。
沈黙が続くこと数分。
車は多くの人が行き交う繁華街の中で止まった。
「着きました。」
と運転手に言われたので、
あ、分かりました。ありがとうございます。
そう答え、自分でドアを開けようとすると
「あ、少々、お待ちください。開けますので。」
助手席の男性が外に出て、外からドアを開けてくれた。
映画で見た光景だけど、なんか申し訳なくて、
すみません、ありがとうございます。
とペコペコ。
前を走っていた車からパーカー男性が降りてくると、パーカー男性を先頭に店内へ向かう。
ここでも車に乗車していた人たちを含め、お店の女の子たち、たくさんの店員さんがズラリと並び、頭を下げる。
そのまま、煌びやかで分厚い扉で仕切られた部屋へ通された。
さっきの店の部屋もかなりゴージャスだったが、ここは、さらに高級感のある部屋だった。
天井はかなり高いし、シャンデリアも大きい。
さらにカラオケ用のTVもかなり大きいサイズ。
石油王の部屋か?と思うほど。
そんな部屋に若干、興奮しながらも、前の店と同じように下座に着座した。
美女たちの登場
座って間もなく、部屋のドアが開き、オーナーと店長が現れ、パーカー男性に挨拶をする。
おしぼりを一人一人に配り、飲み物の注文を取る。
注文を取り終えると、
「では、ごゆっくりしていってください。」
そう言って深々とお辞儀をして、部屋を出ていく、オーナーと店長。
部屋のゴージャスさを目に焼き付けるかの如く、キョロキョロしていると、ドアがノックされた。
「失礼します。」
と澄んだ女性の声が聞こえた。
ドアが開くと、数人のドレス姿の女性がゾロゾロと入ってくると、パーカー男性の横から相席の方たちの横、最後に自分のところへやってきた。
「こんばんは。」
横に座った女性に挨拶をされたので、挨拶を返した。
挨拶の返し方は、いい大人のくせに緊張のあまり初々しい青年になっていたであろう。
とにかくいい匂い。
そして、目のやり場に困るほどに胸の谷間が目に入る。
さらに美人のトリプルコンボにすでにノックアウト気味。
そんな状況だったものだから、顔などにもそれが現れていたんだろう。
パーカー男性が異変に気づき、
「アノニさん、まだ、緊張?カチカチじゃん」
はい…こんな高級店、入った事ないので…。どうしていいものか(苦笑)
そう答えたが、反社4名に囲まれているっていうのもあるよ!と内心は、思っていた。
パーカー男性は笑いながら、
「酔えば緊張は解けるよ!今日は飲もう!」
と言ってくれた。
それと同時にビールが届き、各人へ渡る。
今度は、パーカー男性、自ら、乾杯の音頭を取った。
「アノニさんのビジネスの成功を祈って…乾杯!」
乾杯!
ありがとうございます!と言いながら、再び、全員とグラスを突き合わせ、ビールを飲む。
結構、自分なりに飲んでいるつもりなのだが、酔えない…。
ふわふわしてはいるが、友人たちと飲む時のようにメーターが上がらないのだ。
なぜならば、気が抜けるような空間ではないからだ。
失礼にあたるような行為をすれば、山の土中に埋められることだってあり得るかもしれない状況なのだから。
ここで、パーカー男性の横にいた女性が、今日はどういう集まりなのか、聞いてきた。
パーカー男性が
「今日は、そこにいるアノニさんっていう社長さんのビジネス成功を祈っての集まり。」
そう答えた。
そうすると、何かのアンテナが反応した隣の美女が急に距離を縮め、密着してきた。
え?何、何?と美女の顔を見ると、もの言いたげな目で見つめられ、内心、凄まじく動揺した記憶がある。
当時、女耐性が全くないに等しかったのもあるが、とにかくタイプの女性だったのもあり、心臓バクバクになっていた。
今、思い返すと、たったそれだけで?と思う。
女性たちも飲み物を注文し、女性たちへの飲み物も行きわたると、パーカー男性に向かって、
「いただきます」
と会釈をすると、パーカー男性は、笑顔でどうぞ、どうぞというようなジェスチャーをした。
その直後、隣の美女が
「いただきます。」
と目を見て言って乾杯を迫るから、乾杯をした。
その後、他愛もない身の上話をしながら、酒を飲む。
美女との会話のお陰でちょっと緊張は解けたかもしれない。
そんなこんなで、時が進んだ。
意外な共通点
ビールを飲んで、小便を催していたが、場が場だけにかなり我慢をしていた。
しかし、それも限界がきたので、隣の美女にトイレの位置を教えてもらい、トイレに向かうことにした。
立ち上がり、
すみません。ちょっとトイレに行ってきます。
と言ってから向かおうとすると、パーカー男性が
「オレも行く。」
と言い、一緒にトイレに行くことになった。
よりによって、一番偉い人と連れションだ。
トイレに入る。
男性用の便器が2つあり、個室が1つあるトイレだった。
しかしながら、とんでもなく煌びやかなトイレだ。
奥の方の便器にパーカー男性が行ったので、手前の方の便器を使うことにした。
便器に立ち、小便を出そうとするが、緊張のあまり、全然出ない。
膀胱は破裂寸前だっていうのに!
パーカー男性の方をチラッと見ると、片手で携帯をいじりながら、勢いよく出ている。
気を紛らわそうと携帯を取り出しいじる。
そうしていると、パーカー男性が便器から離れた途端、ようやく小便が出てくれた。
我慢しまくっていたせいか長時間放出していると、パーカー男性が話しかけてきた。
「あれ?アノニさん、オレと同じ携帯じゃない?」
パーカー男性の携帯をよく見ていなかったが、携帯が同じだったのだ。
デザイン重視で選んだ携帯だったのもあって、結構、珍しいもので同じものを使う人を初めて見たぐらいだった。
「これ、使ってる人初めて見たよ」
僕もです。色まで一緒なんてびっくりしました!
「アノニさんとは話が合いそうだわ!いいよね、これ!」
お互いにその携帯を選んだ理由を話しながら、トイレを後に部屋へ戻る。
ここから、様々な事柄や考え方で共通の価値観などがあり、パーカー男性との仲が劇的に深まっていく。
そして、この夜、奇妙な体験をすることになる。