反社勢力と聞くと、つい、「アウト●イジ」や「龍が●く」の世界を思い浮かべる人が多いだろう。
その他、反社勢力には、ギャング系、マフィア系も含まれるかもしれない。
ほとんどの堅気の人間であれば、恐怖の象徴でもあるかもしれない。
私自身、反社の人と仲良くなるまではそんなイメージを持っていた。
反社にも色々なタイプがいる
見た目でいえば、見るからにソッチ系な絶対怒らせてはいけない、目を合わせたらいけない風貌な人は多々。
でも、反対に「え?」って思うほど、見た目が一般社会に溶け込み、そんなオーラを感じない人もいる。
後者の人であっても、見た目が普通に見えるだけで、オーラを全開にした時、前者を上回る場合もある。
私が仲良くなった氏は、後者の方だった。
初めて会った時は、パーカーを着て、全くソッチ系には見えなかった。
本当に普通に街に溶け込んでいて、そんなオーラは一ミリも感じない。
そんな人がグループ内では、幹部クラス。
明らかに怖そうな人たちが平身低頭するほどの実力者だ。
氏と偶然にもデザイン携帯が一緒だったことから、様々な話に華を咲かせる。
私の着メロがゲームミュージックだと知ると、氏はさらに目を輝かせて、自らの携帯の着メロを鳴らした。
一致こそしていないが、同じゲームミュージックだったのだ。
しかも、自分で入力して作ったとのことでビックリした記憶がある。
当時やっていた携帯アプリゲームも近いものがあり、どんどん話が盛り上がる。
それと同時に私の席が氏の隣。
そう最上座に移動となった。
周りの御付の方々や接客をしていたキャバ嬢たちが話についてこれず、キョトンと目を丸くし、見つめているだけ。
それぐらい我々は盛り上がっていた。
「こんなに仲良くなれたの初めてだよ」
氏は、笑顔でそう話した。
話が合う人と出会ったことがなかったようだ。
確かにアングラな世界でここまで話し込める人はほぼほぼ皆無だと思う。
一般社会でもそういうコミュニティや掲示板とかで出会わなければ、なかなかリアルで出会うことはないと思う。
私もその一時は、敬語は使っていたものの氏が反社の幹部ということを忘れて、話し込んでいた。
さっきまであんなに怯えていたのに。
話し込んで気づいたのだが、氏は、とにかく話術レベルが高い。
一方的に喋るのではなく、問いかけをしてきて、こちらも話しやすい雰囲気、流れを作ってくれる。
そして、とにかく笑ってくれる。
嬉しく感じるほどに笑ってくれるので、私もとてもいい気分だったのを覚えている。
さらに氏は、一緒に来た仲間の人、キャバ嬢の人たちにも気を配り、たまに話を振る。
氏の気配りや話術、そういうスキルは、一般社会でも成功するだろうなと今でもそう思う。
「もうオレたちは友達だ!」
氏は、突然、肩を組み、大声で宣言した。
私はとても困惑したが、幹部の人と仲良くなれたことに、若干の優越感というか喜びを感じていた。
なぜなら、あからさまに皆の態度が変わるからだ。
御付の方々の対応も元々悪くなかったのだが、丁寧さが増した。
キャバ嬢も猛アピールを仕掛けてくる。
さっきまで名刺すら渡さなかったのにしっかり「プライベートのだよ」と箔押しした、メールアドレスと電話番号を書いて、テーブル下で渡してきた。
一応、後日談として、「ありがとう」と連絡はしたが、そういう関係にはなっていないことを付け加えておこう(笑)
楽しい時間になった途端、時が経つのが早くなる。
あっという間に深夜になっていた。
「そろそろお開きにしようか」
氏はそう言うと、カバンを御付の方に渡す。
カバンを持った人が会計を行うため、部屋の外へ出る。
そこで私は、仲良くなったこともあり、勇気をもって、問いかけた。
すみません。僕、お金あまりなくて…。
そういうと氏は
「いいよ、大丈夫!気にしないで!オレが払うから。儲かった時にまた奢ってよ」
と言ってくれた。
分かりました!ありがとうございます!ごちそうさまです!
そう返事し、なぜか握手を交わした。
会計をしていた御付の方が戻り、領収書と鞄を氏へ渡す。
支払いは見間違えかと思う金額
隣に座っていたこともあり、チラッと領収書を見ると、そこには、さっきの店より多い金額が記されていた。
中古の車がキャッシュで購入できるレベル。
驚きしかなかった。
心で「すげぇ…」を連呼していたと思う。
領収書があるということは、鞄にはそれ以上の額が入っていて、キャッシュで支払えたという事実も考えるとさらに驚きが増したのを覚えている。
皆々から「ごちそうさまでした」の声が上がる中、帰路につくため、部屋を出る。
最後列で部屋を出ようとしたが、氏が肩を組んできたこともあり、先頭で部屋を出た。
十戒のように道を作っている人たちが若干、驚きの表情で頭を下げている。
これは、本当に妙な優越感に浸れる。
だが、ここで、調子に乗ったらダメだ。
偉いのは氏であり、自分は偉くないのだから。
道路に出ると、移動してきた時と同じ高級車が二台。
「アノニくん、今日は楽しかったよ!また、連絡するから遊ぼう!」
氏が笑顔で大声を出した。
はい!今日はありがとうございました!遊びましょう!
私も大きな声と笑顔で返事をした。
バイバイとジェスチャーしながら、氏たちは、先頭の高級車に乗り込む。
私は、後ろの高級車に乗り込み、ホテルまで送迎してもらった。
部屋に入ると、どっと疲れが出てきたが、氏にメールをしておくのが礼儀だろう。
すぐにメールをし、怒涛の一日が幕を閉じた。
<筆者談>
出会いの部分は今回で終わりです。
今後は、シリーズものというより、アングラな世界を含め、様々な経験談をメインに執筆していく予定です。
ご期待ください。